心地好い気だるさの中で、アクセルは目を覚ました。

「う〜ん……」

 うねる長い黒髪。白い肩。回した腕の中の温かな体。

 ようやく帰ってこられたのか。

「めぐみぃ……」

「さっさと離れろ」

 冷え切った声に一瞬びくりとした後、すぐに気を取り直して抱き締める。

「どうして? 俺やっと帰ってきたんだよ? …あ、さてはずっと放ったらかしですねてるんだな? ま〜ったくもう、めぐみってば可愛いんだからこのこの」

「誰が……何だと?」

 振り向きざま睨みつける赤い瞳。

「……あらぁん?」

 ――めぐみの目は赤くない。

 ついでに言えばこんな仏頂面でもない。

「早く離れろと言っている」

 ――ていうか。

「うそおぉぉぉ―――!?」

「耳元で叫ぶな、うるさい……!!」

 黒髪で赤い目の知り合いなんて、一人しかいない。

「アアアアアアンタまさか、テ……」

「今その名を呼ぶな、殺す」

 剣呑な目の光と口調が全てを物語っている。アクセルは夢の中からようやく現実に引き戻された。

 自分の意志と関係なく時空を飛ばされる妙な体質になって以来、アクセルは自分の恋人の元へ帰っていない。惚れっぽい性格の彼の事、様々な時代で出会った美人にちょっかいをかけてきていたものの、自分にここまで見境がないとは思わなかった。

「よりにもよって…アンタかよぅ……」

 いくら一人寝は寂しいからって、まさか男にまで。

「……男?」

 ――ちょっと待て。

 アクセルは先程から気になっている事があった。

「……早く……離れてくれ――」

 腕の中の相手が今名前を出したら殺されそうな『彼』だとして、この妙に柔らかな手の中の感触は。

「まさか」

 少し力を入れてみる。小さな悲鳴が上がり、それが何かを確信する。

「それじゃ、こっちは」

 恐る恐る手を下へ伸ばす。

「ゃ…め……っ」

 ――付いてない。

 いや、付いてない以前に。

「はい―――!?」

「――っ、動くな…っ」

 どうやら繋がったまま、眠っていたらしい。

「あぁ、え〜と……野郎じゃない分マシかなぁ」

「よくない、さっさと抜け……!」

 涙目で凄まれた所で、何の迫力もない。むしろ。

「それじゃ誘ってるようにしか見えないって――」

 『彼女』の中で、アクセルは次第に硬さを取り戻す。それを悟って腕の中から逃げ出そうと必死に暴れるが、がっちり抱き締められている上肉楔で繋ぎとめられて上手くいかない。おまけに暴れる度に内壁が擦られて、余計に力が入らない。

「――くぅ…ぁ…っ」

「ん…イイよその声、ところでちょっと質問なんだけど……一応アンタ男じゃなかったっけ?」

「……改造…された…時に……色々あって、この…ザマだ……もう…離してくれ――」

 どう色々あったのか興味はあったが、聞いていて楽しい話でもなさそうだったので、アクセルはそれ以上問うのを止めた。

「あ〜、ゴメン。何か一発抜かなきゃおさまんない」

「…も…ぅ、やめ……、あれだけやって…まだ足りんのか――」

「だってゆうべの事覚えてないんだもん」

 言いながら『彼女』の曲線を指先で辿る。全身を震わせ、声が漏れるのを堪える。

「どういう訳か…知らんが…いきなり森に、…落ちてきて…っ、…んん…っ」

「落ちてきてどうなったの?」

 体を起こし、胡座をかく。未だに逃げようとする体をその上に座らせ、背後から貫きながら耳朶を噛んで訊ねる。荒い息がかかって、『彼女』の肌が上気して染まった。

「ひどく落ち込んでるようだったから、家に連れて帰って……飲んでいる内に貴様が」

「え?」

 言われてみれば、確かに少し頭が痛む。記憶の糸を手繰り寄せる。

「アレ――?」

「覚えてないならその方がいい。いや忘れろ」

 しっかり覚えている。日本が滅ぼされた時代に飛ばされていた後、ここにまた飛ばされてきて『彼女』と会って飲んで。

『どうしてあんな……、めぐみ――』

『少し飲みすぎだ。大体その時代ならお前の女は死んでいるだろうが』

『そーゆー問題じゃないの! それに俺とめぐみの子孫がいたかもしれないじゃないか、それがあんな簡単に』

『……』

 絶句して突っ伏したアクセルの頭がそっと撫でられる。その頃まだ生まれていなかったとはいえ、『彼女』は自分がギアである事にいたたまれなさを感じていた。

『めぐみぃ……』

 顔を上げて抱きつくと、『彼女』は苦笑して肩に触れた。

『やっぱり飲みすぎだな。今日はもう休め』

 触れられた所から熱が伝わって、思わず薄い唇を貪る。

『―――!?』

『どうして、めぐみ……!』

 ――ああ、もう。

「思い出すなと言ったろうが――」

 涙目が剣呑な光を宿しているが、まるで凄みがなかった。

「メンゴメンゴ……ねぇ、どうしたら機嫌直してくれる?」

 背後から頬を摺り寄せて、手の平全体で包み込んだふくらみを揉みしだく。

「知るか…っ」

「知らないんだったら追求してもいいよね?」

 白い両脚を掴み、Mの字型に開かせる。結合した部分が露になって、『彼女』が羞恥のあまり涙声で怒鳴りつけた。

「な……、…やめ……もぅ……解放してくれ――!」

「だからお詫びにうんと気持ちよくしてあげるからさぁ」

 後ろから浅く揺すり上げて熱い息を吹きかけながら囁けば、泣き声とも喘ぎともとれる甘い悲鳴。

「…っう……思い出したなら、も……いいだろう……、離せ、ぁ――」

「こっちの口は素直なのになぁ」

 呆れるように一人ごちて首筋を舐め上げると、一段と締めつけがきつくなる。

「ほら、ね?」

「……眠いんだ、寝かせてくれ……」

「これが終わったらきっと気持ちよく寝られるから」

 しれっと言ってのけると呆れたのか諦めたのか、『彼女』はその身をアクセルに預けた。

「ん…っく、ぅ……、あ――」

 背後からとは言っても、座った状態ではあまり奥まで進めない。『彼女』がもどかしげに首を振ると、長く艶やかな黒髪が蛇のようにうねった。

「ところで質問なんだけど」

「……?」

 アクセルが指差した方向にある止まり木で、首輪をしたカラスが羽繕いしている。

「――サキュバス」

 ほとんど縋るような目で『彼女』は使い魔を見ると、カラスは楽しげに言った。

「ご主人様はぁ、見られてるのとみんなでするのとどっちがお好きですかぁ?」

 耳元で低く囁く声。

「……どうする?」

 サキュバスは角を持つ裸身の娘の姿に戻ると、潤んだ目で睨む主の前にちょこんと座った。

「あ、どっちもイヤってのはナシですからね? そんな心配そうな目で見なくても大丈夫ですよぉ、こういうの結構慣れてますから」

「お前が交代するという選択肢はないのか……?」

「え――?俺見学なのぉ?」

「貴様と交代してどうする! 頼むサキュバス、代わってくれ!!」

 不服そうなアクセルを無視して、『彼女』は自分の使い魔に懇願する。サキュバスは人差し指を頬に当てて、悪戯っぽく笑った。

「却下で〜す、だってご主人様最近遊んでくれないんだもん」

 主を主と思わぬ発言に『彼女』は言葉を失い、背後でアクセルが吹き出した。

「だってさ、っくく……ねぇどうする?」

「早く答えないと勝手に始めちゃいますよ?」

 肩をわなわな震わせ『彼女』が罵声を浴びせかける。

「この――」

『悪魔だもん』

 声を合わせて二匹の悪魔はにやりと笑った。

「それで結局どうしますぅ? ご主人様」

「そこで……見てろ……」

 それだけ言って、『彼女』は肩を落とした。




「…っう……ん、…んん…っ…あ……」

「下ばっかり向いてちゃダメ。よく見えないでしょ?」

 後ろから顎を掴まれ、顔を上げさせられる。潤んで歪む視界に飛び込んでくる顔。

「ご主人様、滅茶苦茶色っぽくて可愛いです……やっぱりアタシもしたかったなぁ」

 サキュバスが目をきらきらさせながら呟く。冗談じゃないとばかりに『彼女』は首を振った。

「見てろって言ったんだから、ちゃんと見せてあげなきゃダメだよ? それとも本当は三人でしたかった?」

「ちが…、ぁ…っ、…ゃ……」

 中途半端に繋ぎ止められ刺激を与えられ続け、いつまで経っても解放させてもらえそうにない。『彼女』の最後の羞恥心が、音を立てて壊れようとしていた。

「…っは、あ…ぁ……、――っ…ふ…あぁ…っ!」

「大分素直になってきたね…可愛いよ」

 アクセルの律動に合わせ、腰を押しつけるようにして応える。粘着質の音が響き混じり合った体液が繋がった部分から溢れた。

「もっと奥まで欲しい?」

 さっきまでの『彼女』なら絶対に答えようのなかった問いにも、素直に頷く。アクセルは背後から『彼女』をきつく抱き締めた後、一度自身を引き抜いた。

「おいで」

 仰向けになって手招きする。しばらく躊躇った後、そろそろ近寄ってきた『彼女』がアクセルの上に跨った。

 白い手を取り、屹立したそれに触れさせる。慌てて引っ込めようとするのを止めて、自分で位置を定めさせる。

「ゆっくりでいいから、下りてきて」

 淫らな音を立てて『彼女』がアクセルを呑み込み、声にならない悲鳴が上がった。

 限界が近づいているのを察して容赦のない責めが始まる。

「ぁあ…っ、あ……、待…深すぎ…っ」

 過敏になりすぎた体は、かえって絶頂を恐れて震える。

「しょうがないなぁ」

「あっ?」

 自分とは別の女の腕が巻きつき、少しだけ腰が浮かされる。

「やっぱり見てるだけじゃつまんないし」

 自分の体で主が隠れないよう、少し横からサキュバスは『彼女』に抱きついた。

「お前、見てろと…言…っ……」

「はい却下。あんまり我がまま言うと……腰、落としますよ?」

 文字通りの悪魔の宣告に『彼女』は慌てふためいたが、この状況でどうにかなるものでもなく。

「ね、ご主人様。お二人の見てたらアタシもこんなに」

 主の手を取って自分の泉に触れさせる。絡みつく蜜に諦めたような表情を浮かべ、『彼女』は指を奥へ進ませた。

「あぁっ、やっぱりご主人様優しい…大好き…っ」

「よかったねサキュバスちゃん、でもこっちもおろそかにしないでよね?」

 アクセルが軽く『彼女』の腿を抓ると弓なりになった体が震えて、再び彼をきつく締めつける。

「もぅ……早く、終わらせ……」

「了解――」

 『彼女』らしい懇願に苦笑しつつ離れぬように腰を押さえつけて抉れば、同時にサキュバスが身を屈めて張り詰めたふくらみを吸い上げて、追い立てた。

「く…ぁ…、あ、あぁっ…っぁ…ああぁあ………!!」

「ん……」

 低く呻くと、アクセルは『彼女』の内に白い熱を放った。

 ようやく解放された『彼女』はサキュバスの腕の中に倒れ込むと、そのまま小さな寝息を立て始める。

「アレ…? アタシまだ足りないんですけどぉ……ご主人様ぁ――」

 不満げに溜息をつくサキュバスにアクセルは声をかける。

「じゃぁ、俺とでも続きする?」

 『彼女』を起こさぬようそっと体を離して横たえながら、囁いた。

「別にいいけど今度場所変えてしようよ、ご主人様寝かせてあげたいし」

「いいよ、どこにす……おや?」

 アクセルの体が次第に透けて、指先から融けるように姿が消えていく。

「そこでそうくるかああああ!!!」

 間の抜けた絶叫を残し、ベッドにはすやすや寝息を立てる『彼女』とサキュバスが取り残された。

「あれぇ……? もう、何なのよぅ――」

 頬を膨らませてから傍らの主の寝顔を見つめ、やれやれという風に首を振る。

 それから主の横に潜り込んで目を閉じると、そのまますぐ眠りに落ちていった。


END


言い訳

 これも某所に投下したものを修正したものです。うう、女体ネタ好きなんですよ。しかもお馬鹿なの。

 その頃はオチをどうしたらいいのか分からなくて寝落ちにしていたものが多いです。

 今もオチはどうしようかなと悩んでたり。衝動で書く癖を直さないとですね(汗)

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